日記6.社会保障協定と二国間租税条約(6/26)

反応すべき箇所で反応できなかったことが、この時間になって悔しくなってきたのでまとめておく。

 

状況としては、ライン川水夫Rheinschifferの社会保障といった、統一法das kollisionsrechtliche Einheitsrechtが問題となる場合に起こり得る課題Herausforderungとして、その適用の調整があるeine koordinierte Anwendungという議論が話題に上った時だった。つまり、統一法の適用にあたって各国行政庁の解釈がずれた場合に、どのように調整するかという問題が、理論上は生じうるという議論である。(glaser,2007 p92)

 

ここで、

...keine echten Interessengegensätze zwischen den jeweiligen Solidargemeinschaften bestehen, da der Versicherungspflicht regelmäßig Leistungsansprüche gegenüberstehen.

(通常は給付請求権が保険加入義務と対置されるために、それぞれの国の保険者の間に本当の意味での利害対立は存在しえない)

とつながるのだが、この内容をうまく説明できなかった。

 

租税と比較すればわかりやすく、社会保険の場合は保険料の徴収に対し、明確な反対給付が付随するのだから、いってしまえばゼロサムであり、どちらが徴税するかといった場合に国家間で争うことになる利益が、社会保険の場合には生じない。ゆえに真の利害対立echte Interessengegensätzeは存在しないといえる。

 

話に上ったのは、租税条約に比べると社会保障協定では仲裁に関する規定がほとんどないということである。これは、社会保障協定と二国間租税条約との類似性がなにかと強調される(vgl.原田大樹、2015、p190)なかで、面白い指摘かもしれない。

 

関連して読みかえしたのは、旭川市国民健康保険料事件である。法律の留保Ⅰー5-(2)で取り上げられた判例で、本質性理論(重要事項留保説)の一例として扱われていた。強制の度合い等の点において租税に類似する性格を有することから、憲法84条の租税法律主義が国民健康保険についても及ぶとしながらも、目的が限定されていることから、賦課要件に明確性は、強制の度合いだけでなく、目的・特質も考慮して判断しなければならないと論じられていた。重要な点の一つは、租税が単純な反対給付ではないという点で(国民健康保険の目的は国民健康保険事業に要する費用に限定されている)、上記の租税と社会保険の違いがここでも強調されている。